神域のゲボ犬

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株式のお話

1.株式のしくみ

 株式の仕組みを説明することがこのブログエントリーの主題ではないから、ここでは株式の仕組みを簡単に説明するとともに、巷で言われているウソに言及するにとどめます。

 株式とは何か。このことは、おそらく多くの人が高校の現代社会の授業で一度は習ったことがあります。簡単に言えば、会社に出資する代わりとして出資者に株式が与えられ、株式は株主総会における議決権の個数となります。また、株式に応じた配当金を得ることができます。ここまでは高校の復習です。

 最近ではNISAなどの商品が出ており、株式投資は身近になってきているのではないでしょうか。証券会社や株式投資を推奨するブログなどでは、ざっくりと以下のようなことが述べられています。

「株式を購入することで会社を応援することができます。」

これは正確な表現ではありません。いわゆるセカンダリマーケットにおける株式投資は、既に資金調達が完了し誰かの手に渡った株式を買う行為です。ですから、証券会社を通じて購入するいわゆる株式は他人の手垢が付いたものです。ですから、その株式を購入したところで会社には1円も入らないので会社を応援しているとは思えません。ただし、株価の維持に多少の貢献ができる意味での貢献は可能です。

 従って、一般に「部長は株で稼いでるみたいだよ。」というような会話で言われているのはセカンダリマーケットのことです。これは、高校で学ぶ株式会社とはちょっと違います。高校で学ぶ株式会社はどちらかと言うと株式公開をしていない企業の話に近いです。以下ではいわゆる高校で学んだ株式会社の話をしたいと思います。

 

2.会社の設立

 会社法が改正されて以来、資本金が1円でも株式会社を設立できるようになりました。従来は資本金が1000万円以上であることが株式会社設立の条件でした。それ未満の会社は有限会社として設立されていました。なお、会社法改正に応じて現在有限会社は新規に設立できなくなっています。

 資本金1円でも起業ができるのですから、起業がしやすくなったと言えます。ただ、資本金1円というのは現実的ではありません。後に説明する資金調達において困ってしまうからです。逆に、法人格を利用するためだけの設立であれば資本金は1円で十分でしょう。

 

3.株価の決定

 上記セカンダリマーケットでは、株式は公開されていますから、市場参加者がかなり自由に売買可能です。ゆえに株価は需要と供給のバランスで自動的に決定されます。もちろんマーケットでしか取引してはならないわけはないですが、マーケットの値付けがある以上、株価はそこに吸い寄せられざるをえません。

 では、いわゆる高校の教科書に載っている会社。非上場企業での株価はどのように決定されるのでしょうか。

 この話が本ブログエントリーのキモです。そして、このこともしっかり高校で教えるべきであると私は考えています。

 

 初めに、株価は会社設立の際に決まります。

 例えば、発行済み株式数100株、資本金100万円という会社を設立した場合、株価は1万円です。このとき、資本金=時価総額となっています。ここでは、従業員は社長1人で100株すべてを社長が保有するという設定にします。

 

 次に、株価が変動するタイミングとしては、外部からの資金調達が考えられます。

 例えば、投資家から1000万円調達したいという場合です。上記の設定では、100万円分の株しか無いですよね。発行可能な株式数を300株に増やしたとしても、全部で300万円分の株式しか会社には無いことになります。

 高校の授業で教わる話では、「出資金と引き換えに株を与える」わけですから、1000万円を出資したいと言われてもそれに対応する数の株式を与えることができません。

 この問題を解決するのが株価です。そう、今の株価1万円を100万円まで上げてしまえばいいのです。そうすると、1000万円分の株式数は10株ということになります。とてもダイナミックですね。公開株では一瞬で100倍になりませんから。

 この場合、新たに発行する株が10株、発行済み株式数が110株。株価は100万円なのですから、時価総額は1.1億円となります。保有比率は、社長が100/110で投資家が10/110です。

 ベンチャー企業の人の側から見ると、バリュエーション1.1億円で出資してもらった、ということになります。

 これだけのことで、会社の運転資金は1100万円になりましたし、会社の時価総額は1.1億円になったわけです。高校の授業で習う株式会社とは本来こういうものなのです。

 

4.交渉

 さて、上記の例では、投資家が1.1億円のバリュエーションを飲んだわけですが、事業の成長性が無ければその条件は飲まないかも知れません。

 ここで大事なのは、保有比率です。投資家は1000万円の代わりに、10%未満の株を保有することになりました。その比率が経営に口出しできる比率です。ただ、具体的にどの程度まで干渉可能かは保有比率に応じて決まっています。例えば帳簿を見ることができるのは3%以上から、など。

 従って当然ながら投資家としては、金額よりも割合を欲しがります。社長はできるだけ株式を保有されないことを望みます。このせめぎあいから株価は形成されます。ここがセカンダリマーケットとは色合いが違う部分かと思います。

 なお、非上場企業との株式の売買はプライマリマーケットと言われます。

 

疲れたので、とりあえずここまで。あとは資本政策と、デットファイナンスと、EXITを適当に書いて終わり。正直、上に書いたことくらいは高校で教えておいていい。エクイティファイナンスって結構テキトーだし、起業したいって思う人も増えるんじゃないかと思う。